ソラフラワーはタイの湿地から届く。手仕事でひらく花の産地と作り手の話
ソラフラワーは、東南アジアのタイで作られたものが多く出回っている、手作りの天然素材の花です。原料はマメ科の植物ソラの茎の芯。乾かした芯をナイフでかつら剥きにして薄いシートにし、花びらを1枚ずつ切って手で組み立てます。
マルシェのブースでソラフラワーのリースを手に取ったお客さまからは、「これ、生花ですか?」「ドライフラワーですよね?」とよく聞かれます。ソラフラワーは花びらの縁がわずかに反って、表面に細かい繊維の毛羽が立っている。だから遠目には乾かした生花に見えるんです。
「湿地に生えている植物の、茎の中身を薄く剥いて花のかたちにしたものなんですよ」とお答えしています。
ソラフラワーの原料は、ソラ(sola/shola。学名 Aeschynomene aspera、マメ科の草本)の、茎の内側にある白いスポンジ質です。染色も成形も人の手で行われます。ソラフラワーがサステナブル素材、エシカル素材と呼ばれるのも、この原料の育ち方と手仕事によるところが大きいとされています。素材そのものの詳しい特徴や、造花・ドライフラワーとの見た目の違いはソラフラワーとは?造花・ドライフラワーとの違いと原料・作り方にまとめました。
この記事は、その先の話です。どこで、どうやって作られているのか。そして、リースの花材として選ぶときに何を見ればいいのか。順番にお話しします。
ソラフラワーの産地、タイの湿地とソラの植物
ソラフラワーの主な産地はタイです。花材の教室を運営するフラワーエデュケーションジャパンの解説「ソラフラワーって何?」でも、ソラフラワーの多くはタイで生産され、現地の産業として世界中へ出荷されていると紹介されています。
原料のソラが育つ場所
原料のソラは、湿地や水田のまわりに生えるマメ科の草です。英国王立植物園キューのデータベース「Plants of the World Online」によると、自生地は熱帯アジアからオーストラリア北部まで。インドやバングラデシュにも、タイにも生えています。育つ環境によって一年草にも多年草にもなり、低木状になることもあります。
高さは2メートルほどになり、茎の中には白く軽い芯が通っています。「ソラの木」と呼ばれることが多いのですが、植物としては草の仲間。硬い樹木を切り出すわけではありません。
インドやバングラデシュでは、同じ植物の芯が「ショラ」と呼ばれる伝統工芸の材料になってきました。祭礼の飾りや婚礼の冠などに使われてきた歴史があります。リースやアレンジ用の花材として日本で手に入るものは、多くがタイで作られたものです。
水田の草から輸出される花材へ
ソラは、もともと花材として育てられていたわけではありません。
ソラは水田のまわりにも生え、稲の育ちを妨げる雑草として扱われることもある草です。その茎の芯が白くて軽く、薄く剥けることから細工物が生まれ、やがて花材として欧米や日本へ輸出されるようになりました。
ソラフラワーがサステナブル素材、エシカル素材と言われる理由
海外の花材店では、ソラフラワーが「サステナブル」な素材として紹介されることがよくあります。理由として挙げられるのは、主に三つです。
一つめは育つ速さ。草なので、何十年もかけて育てた木を伐る林業とは、資源の回り方がまるで違います。
二つめは出どころ。水田のまわりに生える草で、栽培のために新しく森を拓く必要がありません。
三つめが手仕事。ソラフラワーは、人の手で一輪ずつ作られています。産地の人たちの仕事になっている点が、エシカルな素材と呼ばれる理由の一つです。
ただ、「サステナブル」の一語で全部を良いことにするつもりはありません。海外から日本まで運んでいる以上、輸送の負荷はかかっています。素材が生まれてから手元に届くまでの道筋を知ったうえで選ぶことが、お花でござるは大事だと考えています。
ソラフラワーの作られ方。かつら剥きという手仕事
ソラフラワーは、乾かしたソラの芯をナイフでかつら剥きにして薄いシートを作り、そこから花びらを切り出して組み立てる手作業で作られます。
大根のかつら剥きと同じ原理
ソラの茎の外皮を落とすと、中から白い芯が出てきます。発泡スチロールに少し似た、けれどもっと繊細なスポンジ質。これを乾かしてから、剥く工程に入ります。
やり方は、日本料理の大根のかつら剥きとほぼ同じです。芯を回しながら刃を当てて、薄く長く帯状に剥いていく。こうしてできたシートから花びらを1枚ずつ切り出し、重ねたり、帯のまま渦巻き状に巻き上げたりして花のかたちにしていきます。バラのように見える花は、巻き上げて作られたものが多く見られます。色を付ける花は、そのあと染色して乾かします。
工程を並べるとこうなります。
| 工程 | 作業内容 |
|---|---|
| 1. 収穫 | 湿地のソラを刈り取る |
| 2. 皮むき | 外皮を落として白い芯を取り出す |
| 3. 乾燥 | 芯を干して乾かす |
| 4. かつら剥き | 芯を回しながらナイフで薄いシートに剥く |
| 5. 成形 | 花びらを切り出し、巻く・重ねるで花のかたちに |
| 6. 染色 | 色を付ける花は染めて、もう一度乾かす |
| 7. 検品・梱包 | 大きさや状態で選り分けて箱詰め |
| 8. 輸出 | 海外の花材店や卸へ出荷 |
一輪ずつ手で作られる理由
ソラの芯は天然の素材なので、太さも密度も一本ごとに違います。育った場所の水の量や日当たり、刈り取った時期で、同じように刃を当てても剥け方が変わる。だから、硬さを指先で感じながら刃の角度を調整できる人の手が向いています。
手で作るぶん、ソラフラワーの価格は素材代より手間で決まる部分が大きくなります。この話は後の項でもう一度。
リースの花材として見たソラフラワーの特徴
リースの花材としてのソラフラワーの特徴は、軽いこと、一輪ずつ表情が違うこと、そして湿気を吸いやすいことの三つです。どれも、スポンジ状の芯という同じ構造から生まれています。
ソラフラワーの軽さ
ソラフラワーの一番の特徴は軽さです。ソラの芯を薄く剥いて組み立ててあるだけなので、同じ大きさのアーティフィシャルフラワーと持ち比べると、軽さがはっきり分かります。
この軽さは、リースを作るうえで大きな意味を持ちます。花材が軽いぶん、ドアや壁に掛けたときにフックへかかる負担が小さくなります。掛け方そのものは玄関ドアにリースを飾る方法に詳しく書いています。
同じ袋でも一輪ずつ違う
手作業で一輪ずつ作られているので、同じ商品名で買っても、大きさも巻きの強さも少しずつ違います。外周がゆるく開いたもの、きつく巻かれて小ぶりなもの。工業製品の感覚では不揃いに見えますが、ソラフラワーではこれが普通です。
この違いは、リースでは味方になります。組む前に花を大きい順に並べて、大きい花は視線が集まる下のほうへ、小さい花は上部や隙間の埋めに使う。そうすると、ばらつきがそのまま立体感になります。均一な花材だけで作ったリースが平板に見えやすいのは、この奥行きが出にくいからです。
スポンジ質の芯と湿気
ソラの芯は、細かい気泡がぎっしり詰まったスポンジ質です。この気泡のおかげで軽く、同時に湿気を吸いやすい。長所と短所が同じ構造から生まれているわけです。湿気を吸うと花が柔らかくなり、形が崩れたり、カビの原因になったりします。湿気への対処はソラフラワーのお手入れ方法と長持ちさせるコツにまとめました。
ソラフラワーの素材を選ぶときに見たい点
ソラフラワーを花材として選ぶときは、色移り、毛羽立ち、そして同じ入荷分かどうかの三点を見ておくと、仕上がりが安定します。
色移り・毛羽立ち・接着の効き
染めたソラフラワーは、白い紙の上で軽くこすってみると、染料が浮いているかどうかが分かります。紙に色が付く花は、リースの中で隣り合う白い花やグリーンを汚すおそれがあるので、湿気の多い場所に飾るものには使わないほうが安心です。濃い赤や紺は特に確かめておきたい色です。
表面の毛羽は、ソラフラワーのやわらかな光の見え方を作っている部分です。ただ、擦れて毛羽が立ちすぎると、白く粉を吹いたように見えることがあります。
接着にも少しコツがあります。ソラは多孔質なので、接着剤を吸い込みます。グルーを一度に置くと中に染み込んで効きが弱くなることがあるため、少量を置いて吸わせてから、もう一度置いて固定すると外れにくくなります。
入荷した時期で表情が変わる前提で選ぶ
手作業と天然の原料なので、同じ品番でも作られた時期が違えば、色味や乾き具合が少しずつ変わります。白のはずの花が、並べると片方だけわずかに黄みを帯びて見えることもある。一つのリースに使う花は、できるだけ同じ時期に届いたものからそろえると、仕上がりの色がまとまります。
ソラフラワー・アーティフィシャルフラワー・プリザーブドフラワーの作られ方
見た目や特性の違いはソラフラワーとは?造花・ドライフラワーとの違いにまとめてあるので、ここでは「何から、どうやって作られるか」だけを並べます。
| ソラフラワー | アーティフィシャルフラワー | プリザーブドフラワー | |
|---|---|---|---|
| 原料 | ソラの茎の芯(マメ科の天然植物) | ポリエステルなどの化学繊維や樹脂 | 生花そのもの |
| 作られ方 | 芯を剥いてシートにし、手で組み立てて染める | 型で成形し、組み立てる | 生花の水分を保存液に置き換えて着色する |
| 花の姿 | 実在の花を模した創作形が多い | 実物の花を忠実に再現 | 元の花そのまま |
| 個体差 | 大きい(手仕事・天然原料) | 小さい(型で成形) | 中くらい(元の花の個体差) |
| 重さの目安 | とても軽い | 軽い | 軽い〜中 |
| 湿気への強さ | 弱い | 強い | 弱い |
| 向く使い方 | 屋内のリース、ナチュラルな質感を出したいとき | 玄関ドアなど屋外、長期の飾りっぱなし | 室内の特別な一輪、ケース入りギフト |
原料の出どころがそれぞれまったく違います。水辺の草の茎、石油由来の繊維、生きていた花。この三つを同じリースに混ぜるときは、湿気への強さを基準に置き場所を決めると失敗しにくくなります。
屋外に飾るときの考え方
ソラフラワーは、屋外より室内に飾るほうが向いている花材です。スポンジ質の芯が雨や湿気を吸うと、花が柔らかくなって形が崩れたり、色がくすんだり、カビが出たりすることがあります。
軒下のように雨が直接かからない場所でも、梅雨から夏にかけての日本の湿気は、ソラにとっては厳しい環境です。白や生成りの花は、くすみや黄ばみが出ると目立ちやすくなります。玄関に飾りたいなら、ドアの内側、下駄箱の上、廊下の壁など、湿気がこもらない室内を選んでください。
屋外の玄関ドアに掛けるリースが欲しい方には、湿気に強いアーティフィシャルフラワーを主役にした構成をおすすめしています。組み合わせ方はソラフラワーリースの魅力と選び方と玄関ドアにリースを飾る方法をあわせて読んでみてください。
手仕事の花の値段
ソラフラワーの値段は、原料よりも手間で決まる部分が大きい花材です。原料は水辺の草。値段の多くは、剥いて、切って、組み立てて、染めて、乾かす人の時間です。
型から同じものをたくさん作れる工業製品と違い、ソラフラワーは一輪ずつ手で作られます。花が大きくなるほど剥くシートも大きくなり、作る手間も増えるので、価格が上がりやすくなります。
完成したリースの価格は、そこにグリーンや土台の材料、デザインを考える時間、組み立ての手間が加わって決まります。使う花の数や大きさ、デザインの密度で大きく変わるので、お花でござるでは予算に応じてご提案しています。値段と品質の見分け方はソラフラワーの価格帯と買う前に見るべき点にまとめました。
ソラフラワーが写す花と花言葉
ソラフラワーは、作り手が花のかたちを解釈して組み立てた創作の花が多くを占めます。それでも「バラ」「ダリア」といった名前で売られていることが多く、贈るときにはその花の花言葉を添えられます。花言葉は、一般にこう言われているものを載せています。
| ソラフラワーの形 | 写している花 | 一般的な花言葉 | 贈る場面 |
|---|---|---|---|
| 渦巻き状に巻いた大輪 | バラ | 愛情、尊敬 | 結婚祝い、長寿祝い |
| 細い花びらを放射状に重ねた花 | ダリア | 華麗、感謝 | 開店祝い、周年祝い |
| 小さな丸い花が房状 | かすみ草 | 幸福、感謝 | 出産祝い、お礼 |
| 大きく開いた平たい花 | ハス | 清らかな心、神聖 | お供え |
| 螺旋の細かい小輪 | ラナンキュラス | とても魅力的 | 誕生日、退職祝い |
| 円錐形に立ち上がる花 | カラー | 華麗な美、清浄 | 就任祝い、結婚祝い |
贈り物としてのソラフラワーの選び方はソラフラワーはギフトに最適?結婚祝い・長寿祝いに贈る枯れない花リースに、お供え向けの考え方は枯れないお供え花の選び方にまとめています。
よくある質問
天然素材なのに、どうして枯れないのですか?
ソラフラワーは、乾かした茎の芯から作られているからです。しおれるもとになる水分がない状態から作るので、生花のように枯れることはありません。ただし湿気を吸うと柔らかくなり、そのまま放置すればカビが出ることもあります。枯れないことと、何もしなくていいことは別です。
植物を刈って作るのは、環境に負担がかかりませんか?
ソラは湿地や水田のまわりに生える成長の早い草で、何十年もかけて育てた木を伐る林業とは事情が違います。海外から船や飛行機で運ぶ以上、輸送の負荷はかかります。サステナブルと呼ばれる理由と、そうでない面の両方を知ったうえで選んでいただければと思います。
買った花の大きさや色がバラバラでした。ハズレを引いたのでしょうか?
いいえ、それが正常です。手作業で一輪ずつ作られているので、同じ袋の中でも大きさや巻きの強さが違います。飾るときは大きい花を下のほうに、小さい花を上や隙間に置くと、ばらつきがそのまま奥行きになります。均一さを求める場合は、アーティフィシャルフラワーが向いています。
香りを付けることはできますか?
できます。ソラフラワーは液体をよく吸うので、アロマオイルを垂らして香りを楽しめます。白や生成りの花はシミが目立ちやすいため、花の裏側の付け根に少量から試してください。やり方はソラフラワーでアロマを楽しむ方法にまとめています。
お手入れは何をすればいいですか?
基本は湿気を避けることと、ほこりを溜めないことです。柔らかい筆や化粧用ブラシで表面を撫でるように払い、雨の日が続いたら風の通る場所へ一時的に移してください。詳しい手順はソラフラワーのお手入れ方法と長持ちさせるコツにまとめました。
お花でござるから
ソラフラワーの一輪ずつの大きさの違いは、どこかで誰かが一輪ずつ手で組み立てた跡です。そう思うと、リースのどこに置くかを決めるときの気持ちが少し変わります。
マルシェで「これ、生花ですか?」と聞かれたら、これからも同じ話をします。湿地に生える草の茎の芯を薄く剥いて、手で組み立てて作るんですよと。
お花でござるのリースは、ソラフラワーを取り入れたものも、アーティフィシャルフラワーを主役にしたものも作っています。飾る場所の湿気の具合を教えていただければ、それに合う素材でご提案します。商品一覧やカスタムオーダーから、お気軽にご相談ください。

大手銀行員や学童保育所指導員、情報新聞紙の記者兼編集者、都内にある造花専門店での受付など、さまざまな業種に勤務。
現在は2児の母をやりながら、アーティフィシャルフラワーを使用したリースを作り、イベント出展やネット販売しています。
【保有資格】
・フラワーデコレーター2級ライセンス
・保育士

