ソラフラワーに好きな香りをまとわせる。天然素材の花で楽しむルームフレグランスの作法

「もらったプリザーブドのバラに、好きなアロマスプレーをシュッてかけたら、翌朝にはピンクの花びらから色が流れて、下の葉っぱが紫になっちゃって……」

去年の秋、マルシェのブースでそう打ち明けてくださったお客さまがいました。悪気なんて一ミリもない。香りのいい花にしたかっただけ。でもプリザーブドフラワーは染料で色を入れた花なので、アルコールが入ったスプレーをかけると染料がにじんで流れます。元には戻りません。

この一件があってから、お花でござるではソラフラワーのアロマ、つまりソラフラワーに精油を含ませて香らせる方法を、はぎれ花材で片っ端から試しました。精油を直接落とした造花の葉。柑橘系のオイルを塗った樹脂のがく。スプレーを浴びせたリボン。分かったのは、リースの中で香りを引き受けられる花材はごく限られていること。そしてソラフラワーの香りの持ちが、他のどの素材よりも長いことでした。ソラフラワーは、草の茎を薄く削って手で巻いた木質素材の花。火も電気も使わないソラフラワーのディフューザーとして、玄関や部屋に香りを置けます。いわば木の花のルームフレグランス

この記事では、香りを乗せていい花材と絶対に乗せてはいけない花材を一覧にして、ソラフラワーの精油の滴数や香りが続く日数の目安、精油タイプごとの向き不向きまで、お花でござるが実際に作って納めてきた立場からお話しします。

目次

香りを乗せていい花材と、乗せてはいけない花材

いきなり結論から書きます。ここだけ読んで帰っていただいても構いません。

表①:花材別 香りづけ可否一覧

花材可否香りを乗せると起きること代わりにできること
ソラフラワー◎ 適する繊維が精油を吸い、数週間かけてゆっくり放つそのまま滴下してよい
木の実・ポプリ素材(松ぼっくり、ロータスなど)○ 使える表面のくぼみに溜まり、香りは短め裏側に少量。塗装ありは避ける
アーティフィシャルフラワー× 不可樹脂やコーティングが白く曇る、べたつく、埃を吸う隣に置いたソラに香りを担わせる
プリザーブドフラワー× 不可染料がにじんで流れる。下の花材まで色移り触れない位置に香り役を置く
ドライフラワー△ 条件付き油染みで透け、退色が早まる。花びらが崩れやすい花芯の裏に極少量、目立たない位置で
リボン・ラッピング資材× 不可油染みの輪ができ、乾いても消えない香りカードを別添えにする
ワイヤー・グルー部分× 不可接着が緩み、パーツが落ちる原因になる構造部には一滴もかけない
木製プレート・素焼きタグ○ 使えるよく吸うが、濃い色の染みが残る裏面に落とす。表は見せる面として残す

この表を作るのに、失敗した花材が結構な数あります。いちばんショックだったのは、真っ白なアーティフィシャルのラナンキュラス。花びらの一枚に精油を一滴だけ落として様子を見たら、三日後には落とした部分がうっすら黄ばんで、指で触るとぬるっとしていました。洗っても落ちません。

柑橘系精油が樹脂を傷める理由

レモン、オレンジ、ベルガモット、グレープフルーツ。柑橘系の精油にはリモネンという成分が多く含まれています。この成分、いい香りの正体であると同時に、樹脂を溶かす性質を持っています。工業用の洗浄剤にオレンジ由来の成分が使われているのは、これが理由です。

アーティフィシャルフラワーの多くはポリエステルの布地に樹脂コーティングを施したもの。花びらのつやも、がくの硬さも、その樹脂が支えています。そこにリモネンが乗ると、表面のコーティングが少しずつやわらいで、べたつきます。べたついた面には埃が吸い付く。半年もすると、玄関に飾ったリースの白い花だけがくすんで見える。原因が香りづけだとは、まず気づきません。

アルコール入りスプレーで染料が流れる仕組み

市販のアロマスプレーやルームフレグランスには、精油と水を混ぜるためにエタノールが入っています。無水エタノール、DPG(ジプロピレングリコール)といった表記のこと。

プリザーブドフラワーは、生花の水分を抜いて、代わりにグリセリンと染料を吸わせた花です。染料はアルコールに溶けます。だから、アルコールを含むスプレーをかけた瞬間、花びらの中の染料が動き出す。冒頭のお客さまの「ピンクが紫に流れた」は、まさにこれ。赤系の染料が下方向へ移動して、隣の緑の葉に重なった結果でした。

しかもこの現象、かけた直後には起きません。乾く過程でじわじわ進むので、翌朝に気づくことになります。

結論:香りはソラに、彩りはアーティフィシャルに

アーティフィシャルフラワーとプリザーブドフラワーには、精油もアロマスプレーも直接かけてはいけません。リースに香りをつけたいときは、香りを吸う天然素材(ソラフラワーが最適)をリースの中に一つか二つ組み込み、そこにだけ精油を落とす。この方法なら、花の色も質感も一切傷めずに香りを楽しめます。

ソラフラワーのディフューザーとしての仕組み

ソラフラワーは、火も電気も使わない天然素材のディフューザーです。精油を繊維に含ませて、時間をかけて放つ。なぜソラフラワーだけが香りを引き受けられるのか、素材そのものの話から。

タイの水田で育つ茎を薄く削った素材

ソラフラワーの原料は、学名を Aeschynomene aspera という草の茎です。日本では英名の sola / shola に由来する「ソラ」の名で流通しています。タイやインドの水田や湿地に育つマメ科の草で、水に浸かった状態でも育つ抽水性の一年草。

この草の茎の中身が、発泡スチロールのように白くて軽い。職人がその茎をかつらむきの要領で薄く削り、花びらの形に切って、一枚ずつ手で巻いて花にします。だからソラフラワーは、生花を加工したものでも、化学繊維で作ったものでもありません。草から削り出した紙のような素材を、人の手で組み立てた花です。茎という木質の部分から生まれた花なので、「木の花」と呼ばれることもあります。

ソラフラワーそのものについてもっと詳しく知りたい方は、ソラフラワーとは?造花・ドライフラワーとの違いをリース専門店が徹底解説にまとめてあります。

繊維の空隙と毛細管現象

茎の白い部分は、細かい細胞がスポンジ状に集まった組織です。削って乾かすと、その細胞の壁だけが残って、間に無数のすき間ができる。ここが香りを吸う理由。

紙の端をコップの水に浸けると、水が上へのぼっていきますよね。細い管の中を液体が自分で移動する毛細管現象。ソラフラワーの内部では、これが立体的に起きています。花びらの表面に落とした精油の一滴が、繊維のすき間をつたって花全体へ広がる。そして繊維の奥に抱え込まれた精油が、表面から少しずつ蒸発していく。

香水を紙に吹いたムエットが数時間で香らなくなるのに対して、ソラフラワーが二週間から一ヶ月香り続けるのは、この「抱え込む深さ」の差です。含ませられる量が桁違いに多い。

ソラフラワーとリードディフューザーの比較

市販のリードディフューザーは、ガラス瓶に入れた香料液をラタンスティックが吸い上げて放香する仕組みです。ソラフラワーがやっていることも同じ。液体を繊維が吸い、表面積の広いところから蒸発させる。違うのは、ソラのほうが吸い口の表面積が大きく、花びら一枚一枚が放香面になっている点です。

お花でござるで比べたことがあります。同じラベンダー精油を、ラタンスティック三本を挿した小瓶と、直径6cmのソラのバラ一輪に同量含ませて、六畳の部屋で並べて置きました。立ち上がりはスティックのほうが早い。ただ十日を過ぎたあたりからソラが逆転して、二週間目でもソラだけが香っていました。瓶の液が減っていく分、スティックは補充が要ります。ソラは補充の代わりに数滴足すだけ。

倒してこぼす心配がないのも、リードディフューザーとの差です。棚に置く瓶は、掃除のときや子どもがぶつかったときに倒れます。壁にかけたリースは倒れません。玄関に飾るなら、この一点だけでもソラを選ぶ理由になります。

火も電気も使わない安心

香りを楽しむ道具として、キャンドルやお香を思い浮かべる方は多いと思います。ただ、玄関に飾るものとなると話が変わる。留守中に火をつけっぱなしにはできません。

ソラフラワーのリースは、電気も火も使いません。壁にかけておくだけ。小さなお子さんが手を伸ばしても、猫がじゃれても、燃えるものが何もない。「実家の母に贈りたいけど、火を使うものは心配で」というご相談をいただくことがよくあって、そういうときはいつもこの形をおすすめしています。

ソラフラワーの香りを活かす配置設計

ここからは、実際にリースをどう組むかの話。

リースの中でソラを香りの担い手に置く

お花でござるの香り付きリースは、役割をはっきり分けています。見た目の華やかさはアーティフィシャルフラワーが引き受ける。色褪せない赤いバラ、ボリュームの出るダリア、季節感を足すグリーン。この人たちには香りの仕事を一切させません。

そのかわり、リースの中に真っ白なソラフラワーを差し込む。ソラは白か生成りの色みなので、どんな色合わせの中に入れても浮きません。むしろ、濃い色の花の間に白が入ると全体が締まります。見た目の役に立ちながら、香りの役もこなす。この二役ができるのがソラのいいところ。

香りを乗せるソラの個数と位置(風の通り道)

香りを乗せるソラの数は、リース全体で二つから三つ。これがお花でござるの標準です。

多ければ多いほど香るわけではありません。五つも六つも香らせると、玄関を開けた瞬間に香りが塊でぶつかってきます。狭い玄関だと確実にきつい。逆に一つだけだと、風向きによっては全く香らない日が出てきます。

置く位置は、リースの上半分。特に時計でいう十時と二時のあたり。理由は二つあって、一つは人の鼻の高さに近いこと。もう一つは、玄関ドアの開閉で起きる空気の動きが、リースの上側を抜けていくこと。ドアが開くと風はまず上へ流れます。下のほうに香り役を置くと、香りが床に溜まって上がってきません。

エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。香りが一気に飛びます。

カスタムオーダーで実際に組んだ事例

新築祝いのリースをご注文いただいたときのこと。「玄関を開けたときに、いい香りのする家だねって言われたい」というご希望でした。

白とグリーンでまとめたアーティフィシャルのリースに、ソラのマグノリア(木蓮を模した大きめの花)を二つ組み込みました。マグノリアは花びらが厚くて広いので、精油の含みがいい。合わせた香りはヒノキとベルガモットを少し。木の家の匂いに寄せたい、というリクエストからの選択でした。

納品して二ヶ月ほど経った頃、「毎朝ドアを開けるのが楽しみになりました」というメッセージをいただきました。ああ、この形でよかったんだなと。新築祝いのリース選びについては新築祝い・引っ越し祝いに花のリースを。玄関に飾る枯れないギフトに、ソラのリース全般の選び方はソラフラワーリースの魅力と選び方。枯れない天然素材で玄関を飾るにまとめています。

ソラフラワーの精油の滴数と、香りが続く日数

ここでいちばん質問が多いのが「何滴垂らせばいいですか」です。

表②:花サイズ別 滴数・追加間隔・持続日数の目安

ソラの花のサイズ一回の滴数追加の間隔香りが続く日数
小(直径3cm前後・小花やつぼみ型)1〜2滴7〜10日約7日
中(直径5〜6cm・バラ型が多い)3〜4滴10〜14日10〜14日
大(直径8cm以上・マグノリア等)5〜6滴2〜3週間2〜3週間
リース全体(香り役2〜3輪の合計)6〜10滴2週間前後2週間前後

滴数は目安です。精油の種類、部屋の広さ、空気の動き、季節で変わります。夏場は蒸発が早いので短くなり、冬の乾燥した部屋では長持ちします。

垂らすときは、花の中心ではなく花びらの根元へ。中心に落とすと一箇所に溜まって、そこだけ色が濃くなります。根元から入れると繊維をつたって全体に回るので、見た目も汚れません。スポイト付きの精油瓶なら一滴ずつ落とせて楽です。

追いオイルの見極め方

香りが弱くなったかどうかは、鼻を近づけて判断しないでください。至近距離なら、かなり弱っていても香ります。

判断は一メートル離れた位置で。廊下からリースへ近づいて、一メートル手前で香りを感じなければ追加のタイミング。玄関に置いているなら、外から帰ってきてドアを開けた瞬間が一番わかりやすい。外の空気を吸ってきた鼻はリセットされているので、正直な判定ができます。

もう一つの見極め方は、ソラの花びらを指で軽くつまむこと。精油が残っていると、わずかにしっとりします。かさかさに乾いていたら追加時期。

鼻の順応で「香らない」と感じるとき

「一週間で香らなくなりました」というご相談をいただいて、実物を確認したら精油はしっかり残っていた、というケースがよくあります。

人の嗅覚には順応という仕組みがあって、同じ匂いの中に居続けると数分で感じなくなります。自分の家の匂いが自分では分からないのと同じ。毎日その玄関を通る家族は、香りが残っていても感じ取れなくなります。

判定の方法はさっき書いた通り、外から帰ってきた瞬間に嗅ぐこと。それで香れば、精油はまだ生きています。ここで「香らないから」と足し続けると、来客に「この家、香りきつくない?」と思われる濃度になってしまう。実際、そうなってしまったお客さまから「どうやって薄めればいいですか」というご相談を受けたこともあります。

ソラフラワーのアロマ、精油タイプごとの向き不向き

同じ量を落としても、精油によって香り方も持続もまるで違います。

表③:精油タイプ別 香り立ち・持続・ソラ相性・NGな組み合わせ

精油タイプ代表的な精油香り立ち持続ソラとの相性避けたい使い方
柑橘系オレンジ、レモン、ベルガモット早い短い(3〜5日)樹脂の花に飛び散らせない。単独では持続が物足りない
フローラル系ラベンダー、ゼラニウム、ネロリ中くらい中(7〜10日)濃度が高いと甘さが重くなる
樹木系ヒノキ、シダーウッド、サンダルウッドゆっくり長い(2〜3週間)単独だと立ち上がりが地味
ハーブ系ローズマリー、ペパーミント、ユーカリ早い短め(4〜7日)甘い花の見た目と香りがちぐはぐになりやすい
樹脂系フランキンセンス、ミルラ、ベンゾインとても遅いとても長い(1ヶ月〜)粘度が高く繊維に染みが出ることがある
合成香料入りのフレグランスオイル商品による商品による×アルコールや溶剤入りが多く、周囲の花材を傷める

いちばん下の行が大事です。「アロマオイル」という名前で売られている商品の中には、精油ではなく合成香料をアルコールや溶剤で薄めたものが混じっています。ラベルに「精油100%」「エッセンシャルオイル」「学名の記載あり」がなければ、リースには使わないほうが安全です。安価な小瓶は特に注意。

ソラに向く精油と避けたい精油

向いているのは、色の薄い精油です。ラベンダー、ヒノキ、ティートリー、ユーカリ、ゼラニウム。透明か薄い黄色なので、白いソラに落としても跡が目立ちません。

避けたいのは色の濃い精油。パチュリ、ベチバー、カモミールジャーマン(青い)、そしてブレンド済みのマッサージオイル。これらは白いソラに茶色や青の染みを作ります。香りは素晴らしいのですが、見た目を優先するなら別の素材に使ってください。

粘度の高い樹脂系も、量を控えめに。フランキンセンスは香りの持続が抜群なので使いたくなりますが、多いとべたつきます。一滴で十分。

香りを重ねる順番

二種類以上をブレンドするなら、持続の長いものから先に落とします。樹木系や樹脂系を一滴入れて、繊維の奥まで染み込ませる。三十分ほど置いてから、フローラルや柑橘を上から重ねる。

順番を逆にすると、後から入れた重い香りが表面に残って、軽い香りを押し潰します。土台を先に作って、上に軽いものを乗せる。料理の味付けと同じ考え方です。

お花でござるがよく使う組み合わせは、ヒノキ二滴にベルガモット一滴。木の落ち着きの上に、柑橘の明るさが乗ります。玄関の香りとして、老若男女どなたにも嫌がられにくい配合。

花のかたちと花言葉で組む香り

贈り物にするなら、花言葉と香りを結びつけて選ぶと、渡すときの一言が生まれます。

表④:花言葉表

花材花言葉合わせたい香り贈る場面
薔薇(赤)愛情、あなたを愛していますゼラニウム、ローズウッド結婚祝い、記念日
薔薇(紫・ラベンダー)尊敬、誇りラベンダー、フランキンセンス古希・喜寿などの長寿祝い
ダリア華麗、優雅、感謝サンダルウッド、ネロリお祝い全般(「移り気」の意味も持つ花なので、メッセージカードに花言葉を書くときは色や本数で意味を絞る)
木蓮自然への愛、持続性ヒノキ、シダーウッド新築祝い、開店祝い
カーネーション(赤)母への愛ベルガモット、ラベンダー母の日
カーネーション(ピンク)感謝、温かい心ネロリ、オレンジスイート母の日、家族へのお礼
向日葵憧れ、あなただけを見つめるオレンジスイート、レモングラス誕生日、応援の気持ちを込めて

カーネーションは色で花言葉が変わる花です。白は「純粋な愛」ですが、日本では亡くなったお母さまに捧げる色とされてきました。母の日のギフトに白を選ぶ方はまれですが、色の意味を知らずに選ぶと気まずいことになります。お花でござるでは、母の日のカスタムオーダーで白カーネーションのご指定があったときは、必ず一度ご確認するようにしています。

お祝いごとに合わせた香りの選び方

結婚祝いなら、フローラル系を主役に。ゼラニウムやネロリの華やかさが場に合います。新居の玄関に飾っていただくことが多いので、来客が「いい香り」と言いやすい、癖の少ないものを選ぶのがコツ。結婚祝いに枯れない花のリースを。永遠の象徴を贈るウェディングギフトに、結婚祝いのリース選びをまとめてあります。

長寿祝いなら、樹木系や樹脂系の落ち着いた香り。年齢を重ねた方の玄関に甘い花の香りは強すぎることがあります。白檀(サンダルウッド)やヒノキのような、日本人になじみのある香りが喜ばれます。実際、古希のお祝いにヒノキを含ませたリースをお納めしたとき、「お風呂みたいでほっとする」と言っていただいたことがありました。長寿祝い全般の色や選び方は長寿祝いの花・プレゼント完全まとめ|還暦/古希/喜寿/米寿の色と選び方にあります。

高齢の方や妊娠中の方に贈るときは、香りを強くしないこと。滴数を目安の半分から始めて、「足りなければご自身で足してください」と精油を小瓶で添えるのがいちばん親切な渡し方です。

季節ごとの香りの組み立て

同じリースでも、季節で香りを変えると印象が変わります。

春夏の軽い香り/秋冬の樹木の香り

春から夏は、気温が高いぶん香りが立ちやすい季節。強い香りを入れると、湿気と混ざって重たくなります。ペパーミント、レモングラス、ユーカリのような、鼻に抜ける軽い香りを少なめに。梅雨どきはユーカリを一滴足すと、部屋の湿った匂いがやわらぎます。

秋から冬は逆。空気が乾いて香りが立ちにくくなるので、しっかりした香りを選びます。シダーウッド、ヒノキ、フランキンセンス。暖房の効いた部屋では、樹木の香りが空間を落ち着かせます。滴数も夏より少し多めで構いません。

クリスマスとお正月のリースに合わせる香り

クリスマスリースには、断然もみの木の香り。フィルニードル(もみ)やスプルースの精油が手に入りますが、なければシダーウッドとローズマリーを組み合わせると近い印象になります。シナモンやクローブを一滴だけ足すと、お菓子っぽい甘さが加わって季節感が出ます。ただしシナモンは色が濃いので、ソラの目立たない位置へ。クリスマスリースの飾り方はクリスマスリースを玄関に飾ろう。毎年使える枯れない花のリースに書きました。

お正月のしめ縄リースなら、日本の香りで。ヒノキ、和ハッカ、柚子。柚子は柑橘なので樹脂の花に飛ばさないよう注意しつつ、ソラに一滴落とすとお正月らしい清々しさが出ます。白檀を薄く効かせると、玄関がすっと引き締まる。お正月飾りはモダンなしめ縄リースで。枯れない花で迎える新年もあわせてどうぞ。

起きやすいトラブルと手当て

やってしまった後の対処も書いておきます。

シミ・黄ばみ・べたつき

ソラフラワーに精油の茶色い染みができたとき。残念ですが、繊維の奥まで入った色は落ちません。無理にこすると表面が毛羽立って、もっと目立ちます。染みができた花だけを外して、新しいソラに交換するのが現実的な手当て。お花でござるでは香り役のソラだけを単品でお送りすることもしています。

アーティフィシャルフラワーがべたついたとき。乾いた柔らかい布で、押さえるように拭き取ります。こするとコーティングが剥げます。それでも取れないべたつきは、樹脂が変質しているので元に戻りません。

黄ばみは、白い花に精油が付いたときに時間差で出てきます。日光と精油の成分が反応して進むので、直射日光の当たる玄関に飾っている場合は特に早い。予防しか手がありません。

香りが強すぎるとき

足しすぎたときの対処は、風を当てること。窓の近くに数時間置いておくと、表面の精油から先に飛びます。それでも強ければ、ソラの花を一度リースから外して、風通しのいい日陰に一日置く。

ドライヤーの温風は使わないでください。ソラが縮んで形が崩れます。

いちばん確実なのは、香り役のソラだけ交換すること。だから香り担当のソラは、ワイヤーで留めて後から外せる作りにしておくと便利です。カスタムオーダーでご希望があれば、そういう作りにしてお納めしています。

買い替えの目安

香り付きのソラフラワーそのものは、精油を吸わせ続けても二年ほど使えます。判断の目安は三つ。花びらの縁が茶色く変わってきたとき。指で押すと弾力がなくなってぼそっとしているとき。精油を落としてもすぐ表面に溜まって染み込まないとき。

繊維が精油で目詰まりすると、吸わなくなります。そうなったら交換の時期。リース全体を買い替える必要はなくて、香り役のソラだけ入れ替えれば元通り香ります。

リース全体のお手入れについてはソラフラワーのお手入れ方法と長持ちさせるコツ。リースの寿命を2年以上保つにはに詳しく書いています。

そろえるものと費用の目安

香りづけを自分で続けるなら、必要なものはそう多くありません。

精油は、雑貨店やアロマ専門店で扱う10ml瓶が一般的な入り口。ラベンダーやオレンジのような定番は手に取りやすい価格帯で、ネロリやサンダルウッドのような希少な精油になると数倍から十数倍まで幅が出ます。まずは千円台から二千円台で買える定番を一本、と考えておけば十分。10mlあれば二百滴前後は取れるので、リース一つなら一年近く持ちます。

スポイトは、精油瓶にドロッパー(一滴ずつ落ちる中栓)が付いていれば不要。付いていない瓶を買った場合だけ、ガラス製のスポイトを用意します。数百円のもので構いません。

あとは、精油を落とすときに下に敷く紙。垂らし損ねた一滴が床や家具に落ちると、木のテーブルなら跡が残ります。キッチンペーパーを一枚敷くだけで防げます。

保管は、直射日光を避けた冷暗所。柑橘系は酸化が早いので半年から一年、樹木系や樹脂系は数年もちます。開けたまま放置した精油は香りが変質するので、蓋はしっかり。

よくあるご質問

Q. ソラフラワーはアロマディフューザーの代わりになりますか?

なります。ソラフラワーは繊維が精油を吸い上げて表面から放つので、リードディフューザーと同じ働きをします。電気も火も水も使いません。加湿機能のある超音波式ディフューザーの代わりにはなりませんが、香りを部屋に置くという目的なら十分。お花でござるの実感では、六畳から八畳くらいの玄関や寝室でちょうどいい強さです。広いリビング全体を香らせたいときは、香り役のソラを増やすより、リースを二つに分けて置くほうが均一に香ります。

Q. アーティフィシャルフラワーのリースに、直接アロマスプレーをかけても大丈夫ですか?

やめてください。スプレーに含まれるアルコールや溶剤が樹脂コーティングを傷めて、べたつきや黄ばみの原因になります。香りを楽しみたいときは、リースの中にソラフラワーを組み込んで、そこにだけ精油を落とす方法をおすすめします。

Q. 香水で代用できますか?

おすすめしません。香水はアルコールが主成分で、精油の含有量はごくわずか。ソラに落としてもアルコールが飛ぶ数時間で香りが終わります。それより問題なのは、飛び散った液が近くの花材にかかること。プリザーブドなら染料が流れ、アーティフィシャルなら曇ります。香水を吹きたいなら、リースから離した香りカードにどうぞ。

Q. 猫や犬がいる家庭で使っても平気ですか?

猫がいるご家庭では、精油の使用に注意が必要です。猫は肝臓で精油の成分を分解する酵素が少なく、特にティートリー、ペパーミント、ユーカリ、柑橘系、パインなどは中毒の報告があります。空気中に漂う香りでも、体調を崩す個体がいます。

お花でござるでは、猫を飼っているお客さまには香りづけをおすすめしていません。どうしてもという場合は、猫の入らない玄関の外側に飾る、獣医さんに相談してから使う、という前提でお話ししています。犬は猫ほど敏感ではありませんが、鼻が人の数万倍利くので、濃度は人が感じる半分以下に抑えてください。

Q. 精油の香りは何日くらい続きますか?

ソラフラワーのサイズと精油の種類で変わります。中サイズのソラに三〜四滴で、十日から二週間が目安。柑橘系は三〜五日と短く、樹木系や樹脂系は二〜三週間から一ヶ月続きます。夏は短く、冬は長め。

Q. リースを飾ったまま精油を足していいですか?

構いません。ただし壁にかけたまま落とすと、垂れた滴が壁を汚すことがあります。一度外して、下に紙を敷いた状態で落として、十分ほど置いてから戻すのが安全です。

Q. 香りづけしたリースを、贈り物にしても失礼になりませんか?

香りの好みは人それぞれなので、贈る相手の好みが分からないときは、香りを乗せない状態でお渡しして、精油の小瓶を添える方法をおすすめします。「お好きな香りをここに落としてくださいね」と一言添えれば、押し付けにもなりません。ご高齢の方や妊娠中の方には特にこの形が親切です。

Q. お花でござるのリースは、最初から香り付きで届きますか?

カスタムオーダーでご希望をうかがった場合は、香り役のソラを組み込んだ状態でお届けします。精油を含ませるかどうかは選べます。香りの種類のご相談もお受けしていますので、注文時にお申し付けください。マルシェ出店のときは香り付きのサンプルを持って行くこともあるので、ブースで実際に嗅いでいただけます。

木の花のルームフレグランスとして飾るリース

玄関を開けたときに香るものがある。それだけで、家に帰ってくる感じが少し変わります。

大事なのは、香りを乗せる相手を間違えないこと。アーティフィシャルフラワーとプリザーブドフラワーに精油をかけると、色も質感も戻らない形で傷みます。香りはソラに、彩りはアーティフィシャルに。この役割分担さえ守れば、枯れないリースに香りという要素を足しても、何一つ失わずに済みます。

瓶もコードも要らない、壁にかけるだけのルームフレグランス。木の花であるソラフラワーは、飾りながら香らせるという二つの仕事を一輪でこなします。

お花でござるでは、香り役のソラを組み込んだリースをカスタムオーダーでお作りしています。飾る場所の広さ、贈る相手の年齢、ペットの有無。うかがった条件に合わせて、香りの強さと種類まで一緒に考えます。「木の家に合う香りで」「甘すぎないもので」といったざっくりしたご希望からでも大丈夫。

枯れない花に、季節で入れ替えられる香りを。玄関のリースが、もう少しだけ日々に関わってくるようになります。